ハイリスク・ハイリターンの意味




外国語を学んでいると、僕らは無意識に日本語の単語を複数の意味で使い分けていることに気付かされることがあります。

例えば、「遊ぶ」という言葉を直訳すると英語では”play”になりますが、友達と町をぶらつくときは”hang out”といいます。日本語では一貫したイメージがあるものの、確かにオモチャで遊んだりするのと、友達と一緒に時間を過ごすという場面を想像してみると、明確にしていることが異なりますよね。

英文のメールで、「よろしくお願いします。」というニュアンスの内容を書きたいときなどにも、そのまま当てはまるような訳がないので、「自分が本当にここで伝えたいことは何なのか」まで意味的にブレークダウンして、それを英訳するという手続きを踏まなければならないことも多いです。僕たちは、無意識のうちに無数のメッセージを「よろしくお願いします。」に込めているのですね。

さて、投資の世界でも、遭遇率が高く、語義がブレがちな言葉として「リスク」、「リターン」という言葉があります。

読者の方々は、この2つの言葉の意味を説明できるでしょうか?

 

通常、経済学や金融の世界では「リスク」はバラツキの程度(不確実性)を表す言葉であると定義されています。

例えば、1回押すと、1/2の確率で100円、1/2の確率で300円がもらえるボタンAがあったとしましょう。

この場合は、ボタンAを押す毎に平均では200円儲かるわけですが、結果には平均からの絶対値でそれぞれ100円ずつのバラツキがあります。

一方、1回押すと必ず10,000円、貯金が減るボタンBを想定してみます。

こちらは必ず損をするものの、結果的には常に一定なので、この意味の「リスク」では損をするボタンBのほうが低く、儲かるボタンAのほうは高いことになります。

でもぶっちゃけ、これって僕たちが日常生活で使っている「リスク」の意味からは外れている気がしますよね。

この感覚も別に間違いではありません。例えば工学的な領域では、マイナス方向の危険性のみを表す語として用いられることもあります。これなら損する確率が0%のボタンAはノーリスクだが、100%損をするボタンBはリスクが高いという言葉の使い方も適切であることになります。

 

この「リスク」という用語の定義にブレがあることは比較的有名な話なので知ってた方も多いのではないかと思います。

でも、「リターン」についてはどうでしょうか?

僕の感覚では、「リターン」もいろんな意味で混同しながら使いつつもそれに無自覚な人が多いように思います。「リターン」は語義的にはリスクの代償、つまり儲けのことですが、どのようにこの儲けを定義しているかが人によって異なります。

例えば、FXのレバレッジ取引についてはどうでしょう。よく、ハイリスクハイリターンと形容されることが多い代表例ではないかと思います。

この場合の「リスク」はおそらく、大体の人は「大幅なマイナスになる可能性」くらいの意味で使っているでしょう。それに対して、この場合の「リターン」は「儲けの最大値」を表している気がします。つまり、儲かりうるプラス方向への振れ幅の大きさです。

この用法は個人的にはあまり良いと思いません。リターンの元々の意味は儲けなのですから、平均的にどれくらい儲かるのか(期待値)が大事なのであって、最大値ではないはずです。FXはゼロサムの市場でそれぞれが勝ち負けを繰り返してるのですから、平均的な参加者なら期待値はゼロ、取引コストだけマイナスになるはずです。

つまり、実際にはFXはハイリスク・マイナスリターンということができます。

実際に、投資の本などを読んでみても、本の中での「リターン」はほとんど期待値を表しています。

まぁでも、これも所詮は言葉の問題なので、話者と聞き手の認識が一致してれば問題ないと思います。ただ一つ大切なことは、この言葉の話者と聞き手が同じイメージを共有できていることです。

話者が期待値の話をしているのに、聞き手は最大値だと思って聞いているのだとすれば、正しいコミュニケーションが成立しません。

僕はもともとエンジニアだったせいか、言葉の力みたいなものをあまり重視しません。言葉は何かを伝えるための変数名にすぎないので、どの言葉にどんな定義をつけようと、お互いにそれが便利だと思うならよいというような感じです。

僕が彼女を想う気持ちが、恋と呼ばれようと、愛と呼ばれようと、あるいは性欲と呼ばれようと、それが僕の想いに影響するわけではありません。

というわけで、僕のBlogの中では、リスク=不確実性、リターン=期待値という意味で使いますので、以後よろしくお願いします。

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30代元システムエンジニア。 日本では経営学、アメリカで経済学や統計学などのビジネスを専攻。 趣味は株式投資からゲーム、音楽まで幅広く。 リンクフリーです、ご自由にどうぞ。