ファクトフルネス書評──データからみる世界




巷で話題のファクトフルネスを読みました。

データ主義な投資ブログを運営してる身として、いかにも読んでそうだと思われそうな本を実際に読んでるのちょっと嫌だななどの謎の拒否感も一瞬起こりましたが、読んでみた感想としては読みやすかったし幅広い人におすすめです。

この本の趣旨を一言でまとめると、世界はみんなが思ってるほど悪くなってないし、むしろどんどんよくなっているんだよ、という話です。

僕はもともとテクノロジー進歩主義みたいなものが好きですし、実感はどうあれ絶対的な生活水準はずっとよくなり続けているはずだと信じていた人間なので、データ自体に大きな驚きはなかったのですけども、それでも世界について誤った見方をしてた部分もあったし、何より著者の方の生き方には心をうたれる部分がありました。

世界の格差と国内の格差

この図は縦軸に子供が5歳まで生存する割合、横軸に女性ひとりあたりの子供の数をとった図です。

一般に、子供の死亡率が低い国では何人も子供をつくる必要性が減っていくため、女性ひとりが作る子供の数は減る傾向にあります。

乳児死亡率というのはその社会全体の体温を測ってくれる体温計のようなもので、その社会が病原菌、飢餓、暴力などからどれくらい子どもたちを守っているか、よりよい暮らしができているかの指標になるということでこの数値を基準としています。

この図をみると、先進国と途上国の間にはまだまだ大きな隔たりがあるようにみえますが、実はこれ1965年の世界をあらわした図なんですね。

2017年にはこうなりました。

このように、世界の格差は急速に縮小しており、世界の貧困はだいぶ改善されているのがデータからわかります。

それにも関わらず、メディアはどうしても恵まれない人々にスポットライトをあててセンセーショナルな番組を作りたがるため、僕らの感覚とは大きなギャップが生まれている、というような話です。

よく資本主義やグローバリズムは格差を拡大するだなんて悪者にされたりしてますが、こういうデータをみるとやはり世界の格差を小さくするのに貢献している一面があるということですね。

命の計算

著者は医者なのですが、この本でとくに面白かった話はモザンピークで命の計算をした話でした。

彼はモザンピークという貧しい国で、人口30万人の町の唯一の医者として働いていました。

この病院には毎年重病の子供が1000人くらい運ばれてきたのですが、彼はこの子たちには最低限の筋肉内注射を行い(つまり半ば見捨てて)、病院の外の衛生環境を良くすることに時間を費やしたといいます。

彼は病院の子どもたちに点滴を施すべきだと叱ってきた同僚にたいして、

「いいや違うな。限られている時間と労力をすべて、病院にやってくる人のために使うほうが、医者として失格だ。同じ時間を、病院の外の衛生環境を良くすることに使ったほうが、よっぽど多くの命を救える。病院で亡くなる子供だけじゃなく、地域全体で亡くなる子供に対して、わたしは責任があるんだ。目の前にいる命と同じくらい、目に見えない命は重い。」

などと言い返したといいます。

これは以前流行った、マイケル・サンデルの「これからの正義の話をしよう」で出てきたようなトロッコ問題と似たような話ですが、人間はどうしても目の前の人に同情するため、なかなかこういう決断はできないものです。

目の届かないところにいる人の命も目の前の人間の命も同じように扱おうなんて言ってると、それなら僕たちは重病の友達よりも貧困国の子どもたちを優先して自分の金を使ったりしなきゃいけないんじゃねーのみたいな話にもなり、結局どこまでが僕たちの仲間なのかを恣意的に決定することになりますよね。(リベラリズムの原理的な問題)

まあしかし、この著者の方は一本筋の通った強い信念を持った方で、目の前の命を見捨ててその地域全体の命を優先して救い続けたというエピソードには心をうたれるものがありましたし、医療の現場ではこういう哲学で議論されるような判断が実際的に行われてるんだなぁと思いましたねぇ。

本の後半では、たくさんのデータのほかにも、この著者の思想がよくわかるようなエピソードも満載なので、手にとった方はぜひ最後まで読んでみてくださいね。

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30代元システムエンジニア。 日本では経営学、アメリカで経済学や統計学などのビジネスを専攻。 趣味は株式投資からゲーム、音楽まで幅広く。 リンクフリーです、ご自由にどうぞ。