Amazonという企業の強さとチケット転売問題




楽天って、見ているだけで頭が悪くなりそうなサイトの構成してますよね。

やたらと縦長かつ視覚的で、どうみても販売者とって有利なように抜粋されただけの「高評価コメント」が並んでいたり、いざ購入すると見えない所に配置されている広告許諾チェックボックスのせいで大量に広告メールが届くようになったり。

一方でAmazon.comの商品はシンプルに客観的な情報が明記されており、その商品に対して好意的なコメントと批判的なコメントがどちらも表示され、利用者にとって情報を整理しやすいように工夫されています。

日本の巨大IT企業の楽天、アメリカの巨大IT企業のAmazon、両者の姿勢は両国のITリテラシーの差をそのまま反映しているようで日本人としては暗澹たる気分になるわけですが、僕がAmazonが優れていると思う理由はサイトのレイアウトの他にも複数あります。

その中でも、面白いと思って眺めているのはAmazonのAIによる販売価格の自動調整です。

価格.comで他のサイトと比べると、Amazonの販売価格って必ずしも最安じゃないんですよね。

でも、他のサイトでわざわざ毎回新しく個人情報を入力してまで最安値で買うか、少しだけ高くても数クリックのみでAmazonで買うかを考えるとAmazonでいいやと思える程度の価格帯が維持されている。

少なくとも、店頭で買うよりは圧倒的に楽だし安いしAmazonでいいや、と思える程度の絶妙な価格設定になっていると思うんです。

チケット転売騒動にみる不合理

価格にまつわるネタでよく取り上げられるのが、有名アーティストのチケットの転売問題です。

でもこれって、経済学的には価格が正しく設定されてないせいで生じている混乱にすぎません。

よく悪者にされる転売をしている人たちも、経済学的にみればモノを安く買って高く売る(そして取引は合意にもとづいておりwin-winである)という極めて自然な活動をしているといえます。

本来、合理的な価格というのは、ある需要と供給のバランスに対して一意に決定されるもので、販売側が好きに決めるべきものではないんです。

もちろん、チケット販売側にも例えば以下のような言い分があります。

  • ファンとの長期的な信頼関係を気付くためにアンフェアな取引はしたくない
  • 席によって値段を変えるとJASRACに支払うお金が増えてしまう
  • 純粋にファンには安い価格で自分たちのパフォーマンスを観て欲しい

でも、まず1つ目と2つ目は売り手側の利益のためにそうしているということなのだから、その結果不都合が起きても買い手側の責任に転嫁するのはよくないですよね。

そしてよく言われる3つ目の話って、僕はこれ過度なロマンティシズムだと思います。

だって、音楽や絵などの芸術というのは、はっきり言って生活に必ずしも必要ではないものなのですから、そもそも市場競争において不利なわけです。

本当に芸術を持続可能な形で存続させたいと思うなら、多くのアーティストが食っていけるようなモデルを作らないとダメじゃないですか?

別に音楽のアーティストだけを特別扱いする必要はなくて、例えば絵画が高い値段で売れればその芸術家は当然喜ぶわけだし、音楽の場合だけファンのためだとかなんとか、なんか後付けの言い訳くせーなって思っちゃうんですよね。

どちらかというと、やっぱり価格を変えることはファンとの信頼関係の構築においてリスキーだと考えている人が多いんじゃないんですかねえ。

ちなみにプリンストン大学のアラン・クルーガー教授が提案する解決方法はなかなか面白いですよ。

チケットのうち一定枚数を主催者が直接ネットオークションで売ることにして、その時成立した価格が定価以上であれば、定価との差額を慈善団体に寄付をする、というものです。

これなら中間搾取されることもないし、買う側もアンフェアな取り引きをされているということも感じることなくチケットが購入できるでしょう。

まぁ、僕は音楽業界を発展させるためにも普通に儲けるべきだと思いますけどね。

ラーメン屋の行列問題

チケット転売問題の他にも、価格の付け方が間違ってるせいで起こる変な現象ってたくさんあります。

例えばラーメン屋の行列とかもそうですね。

あれもそもそも値段が安すぎるせいで起きている現象ですけど、やはり値段をあまりに変動させすぎると消費者との間の信頼関係を損ねるという考え方があるんだと思います。

いくらそれが需給において正統な価格だとしても、昨日と今日で値段が変わってるのは納得できない!という人がでてくるのは仕方ないですから、現実的には難しいものがあります。

でも、それを平然と、ナチュラルにやってのけてるのがAmazon.comなんです。

Amazon.comの価格というのは流動的だから今日の価格で明日も買える保証というのはないんですが、いちいち文句を言う人っていないじゃないですか。

だから、僕は皆もう少し、価格の付け方について真剣に考えるべきだと思うんですよね。

適当な価格設定にしてしまうと、買い手側と売り手側、両方が損することになりますから。

非常時の価格釣り上げ問題

ところで、需給に合わせた合理的な価格設定というのは時に非情にうつることがあります。

例えば、自然災害等で水などの生活必需品の需要が高まった場合、価格は自動的に釣り上げられることになるからです。

こうなると市場に価格を決めさせるのは倫理的に問題なんじゃないかという人も出てくるわけですが、実際には水の価格があがることによって供給量が増え、結果的に助かる人は増えるんです。

なのでこの場合もやはり、価格の決定は市場に委ねるのが正解ということになります。

また、価格が十分にあがっていれば過度な買い占めを抑制する効果も生まれますよね。

市場の価格メカニズムというのは、実によくできているシステムです。

おわりに

僕はAmazonのように、製品ごとに市場に合わせた価格設定を自動的に行うのって、買い手側にも売り手側にも大きなメリットがあると思っています。

思想家の東浩紀さんなども、少数の人をターゲットにしたような本が一般の本と同じような価格で売られているのはそもそもおかしいといって、少人数のファンによって支えられているような言論プラットフォームを作っていたりします。

マーケティング戦略としては少数のコアな層に向けたサービスを提供しようとすればするほど、どうしても価格設定は高めになるし、それは神の見えざる手が決めていることであって売り手を責めるべきではありません。

株とまったく関係ない話になってしまいましたが、Amazonで買い物をしていたらAmazonの話がしたくなってしまいました。

また新しく3冊ほど書籍を購入したので、機会があれば紹介したいと思います。

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30代元システムエンジニア。 日本では経営学、アメリカで経済学や統計学などのビジネスを専攻。 趣味は株式投資からゲーム、音楽まで幅広く。 リンクフリーです、ご自由にどうぞ。