レバレッジETFを考える




僕にとっては年に7%増える分散投資というのは魔法のような成果で、これだけ確約されれば人生の経済的な問題はすべて解決されたようなもの、というような卓越した数字なのですが、多くの人はこの数値を聞いてもピンとこないようです。

ただ、思い返してみれば僕も昔は年に20%儲けたいとか考えていたりもしました。率直にいって若かったということだと思います。

7%では飽き足りないあなたへ

問題は、そういった大きな利益を狙う人間が、7%どころか0%、むしろほとんどの場合はマイナス期待値の世界へと飛び込んでいくことです。

FX、株の短期トレード、バイナリーオプション、金、仮想通貨、競馬、パチンコ・・・・。

もちろん、何を前提にするかにもよるし、何らかの根拠を持ってトレードしている人はこの限りではありませんが、基本的にこれらは単にリスクを取ってるだけでリターン(期待値)のない商品です。

しかし、実際にはより大きなリスクを取ってもいいからより大きなリターンを目指したいという需要もあるかと思います。

今回は、そういった需要に応えたETFを紹介してみます。

レバレッジETFの特徴

ETFの中には、ETFの内部でレバレッジをかけてより大きな値動きを目指したものがあります。

例えば、アメリカのS&Pに連動させたETFだと、SPXL(レバレッジ3倍)などがSBI証券でも購入可能です。低リスクな生活必需品株にレバレッジをかけたUGEという商品もあるようですが、SBI証券では取り扱いがないようでした。

単純に考えれば、S&Pに年率7%の期待値があり、その3倍の値動きをするのがこのETFであるならば、期待値は21%に達することになります。元のリスクの低さを利用してレバレッジをかけて取引するのは合理的な発想であり、分散投資でリターンを高める方法という記事でも紹介している内容です。

分散投資でリターンを高める方法

2017年6月29日

レバレッジETFは長期投資に向かないのか?

しかし、レバレッジETFの長期投資については、反対意見が多いのも事実です。

例えば、こちらの記事をごらんください。

この記事では、複利効果による実際のインデックス指標との乖離の説明がされています。

複利というのは面白いもので、1日目に20%上昇、2日目に20%下降した場合には100%の地点には戻りません。この場合は1.2*0.8=0.96なので、元値からして4%損をすることになります。

同じ商品に2倍のレバレッジをかけてこの値動きの幅を大きくすると、1日目に40%上昇、2日目に40%下降なので、1.4*0.6=0.86となり14%も損をしている計算になります。

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目

騰落率

(元値比)

レバ1倍 111% 90% 111% 90% 111% 90% 約100%
レバ2倍 122% 80% 122% 80% 122% 80% 約93%

このように、相場が上下を繰り返した場合は、仮にインデックスが100%の地点に戻るような相場であったとしても、レバレッジETFは元値に回復しないことがある、というのがそちらの記事で言われていることだと思います。

しかし、これを根拠にレバレッジETFは長期投資に向かないというのは本当に正しいでしょうか?

複利効果というのは、相場が上下を繰り返した場合はマイナスに働きますが、連続して同じ方向に動いたときはプラスに働きます。連続して上昇するときは上昇幅を伸ばし、連続して下降するときは下降幅を縮めるため、ここで上下した場合とのバランスが取れて期待値としてはニュートラルに戻ります。

つまり、レバレッジETFは膠着状態の相場環境においては損だが、トレンドに乗ってる相場ではお得だということになります。そして、ここ100年以上もの間、アメリカ株は上昇を続けているのです。

実際に期待値とリスクをシミュレーションしてみる

これだけだと感覚的でよくわからないところがあるので、実際に正規乱数とモンテカルロ法を使ってコンピュータを利用したシミュレーションをしてみました。

平均で7%上昇、標準偏差10%の10年間のシミュレーションを1000回分行います。

次に、レバレッジを2倍にして平均で12%上昇(2%のマイナスはレバレッジによる手数料を考慮しました)、標準偏差20%の10年間のシミュレーションを1000回分です。

結果はレバレッジなしのほうが平均1.92倍の上昇(標準偏差は0.57)、レバレッジありのほうが平均3倍の上昇(標準偏差は1.8)となりました。

リスクこそ大幅に増えていますが、やはりリターンはきちんと高くなっています。

ただし、通常のETFと比べるとレバレッジをかけている分の手数料が高めであることから、リスクあたりのリターンは低下することは意識しておきましょう。

レバレッジETFは合理的なギャンブル性を持つ商品

世の中にはハイリスク・ハイリターンを謳った、ハイリスク・ノーリターンの商品が多い中で(ここでのリターンの定義は期待値です)、これこそまさにハイリスク・ハイリターンの博徒向け金融商品であるといえます。

レバレッジETFの魅力のひとつは、自分で借金をした場合と違って暴落によって借金を背負うことになるようなリスクがない点です。

リスクも限定的だし、無くなってもいいお金で何か宝くじや馬券で一発当てたいと思ってる人は、こちらにお金をつぎ込むようにしましょう。ギャンブルも、経済的にやるべきです。

ポートフォリオの極一部にレバレッジETFを採用する方法であれば、ギャンブル性を下げつつ全体のリターンを底上げするスパイス的な運用もできますね。

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30代元システムエンジニア。 日本では経営学、アメリカで経済学や統計学などのビジネスを専攻。 趣味は株式投資からゲーム、音楽まで幅広く。 リンクフリーです、ご自由にどうぞ。