配当貴族銘柄の盲信がヤバい理由




米株村は、配当貴族銘柄が大好きで、実はこれが以前から不思議だったりします。

僕のブログはシーゲルの理論がベースになっていますが、当サイトが推奨するポートフォリオのうち、配当金を重視した戦略をとっているのは全体の10%にしか過ぎず、「株式投資の未来」の中でも配当金を重視した戦略が持ち上げられているのは一部の章のみです。

おそらく、著名な米株ブロガーが配当再投資戦略を好んでいるから人気になった、という感じでしょうか。

僕の考えでは、シーゲル教授は著書の中で様々な市場の偏りを明らかにした上でその永久的な持続性には懐疑的であり、だからこそポートフォリオの半分は世界全体に対するインデックス投資を推奨しているのです。

マルキール VS シーゲル

インデックス投資家のバイブル「ウォール街のランダム・ウォーカー」と、当サイトでもたびたび紹介しているシーゲル教授の「株式投資の未来」ですが、2つの著書を読み比べてみると面白いことに気づきます。

ウォール街のランダム・ウォーカーは、インデックス投資家の理論的支柱ともいえる本で、あらゆるアクティブ投資を否定しています。

特にテクニカル分析を攻撃するときのマルキールは舌鋒鋭く、ユーモアを交えてこう語ります。

ご存知の通り、私はチャーティストに対して偏見を持っている。

それは、個人的な好き嫌いという次元だけではなく、プロの立場に立ったときの見解でもある。

テクニカル分析は、学者の世界では異端の教義であり、それを非難するのはわれわれにとって喜びでさえある

われわれを、このような弱い者いじめに走らせる動機は、第一に、彼らの手法が明らかに間違っていること、第二に、いじめやすいこと、である。

これほど哀れな対象をいじめるのは、多少アンフェアな気もするが、忘れないでいただきたい。

私が守ろうとしているのは、ほかならぬあなたがたの財布なのだ。

ちょっと言い過ぎじゃない?とすら思いますよね。笑

でも一方で、マルキールからシーゲルへの態度はここまで痛烈ではなく、一定の理解を示す姿勢も見受けられます。

シーゲルのポートフォリオ半分を占めるリターン補完戦略、つまり過去の研究データを活用して高リターンセクターや高配当株を狙いうちにする戦略は「スマートベータ戦略」と分類されるのですが、ウォール街のランダム・ウォーカーでも章を割いて触れられています。

多くのスマート・ベータETFは、はっきりと長期リターンを生んでいるとは言い難い。ただ、ごく少数のETFは、全期間を通してみると市場平均より高いリターンを生んでいる。しかしこれらの成功したファンドでも、定期的なリバランスを必要とするものが多く、税制上は高くつく。

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従ってやはり低コストで税制上最も有利な時価総額加重の市場インデックスファンドを、運用の中心に据えるべきだ。その上で、もし特定の属性にフォーカスしたスマート・ベータ・ファンドが魅力的に思えれば、少し追加のリスクを取ってトライしてみてもいいだろう。その場合、万一失敗しても全体に対するダメージは少ないだろう。

マルキールはあくまでスマート・ベータに懐疑的な姿勢を保っていますが、スマート・ベータは通常のアクティブ運用と違ってコストが低いため、「別にひどいことにはならないのでやりたければやってみてもいい」くらいのスタンスなんですね。

「株式投資の未来」を読んでいても感じることですが、シーゲルも個別のスマートベータに絶対的な自信を持っているわけではないだろうと僕は推測しています。

シーゲル流をどう考えるか?

僕のポートフォリオがいわゆるシーゲル流を採用しているのも、それぞれの「偏り」に絶対の自信があるからというわけではありません。

例えば、高配当株は、税制上不利を受けることになるためもし市場平均と同じくらいの成長ではリターンで下回ってしまいますし、小型株はそもそも値動きが大きくハイリスクな側面もあります。

また、ひとつ気をつけなければいけないのは、全体的な傾向として過去に高配当株のリターンが高かったということはあったとしても、すべての高配当株がそうであったわけではないということです。

つまり、シーゲルの研究結果を生かした投資方法(例えば高配当株投資)を取りたければ、高配当株に投資したETFを買うのが最適です。

個別の高配当株というのはそれ以外の要因における株価変動のほうが圧倒的に大きいため、配当の大きさだけに注目して銘柄を選別するのは無理があるからです。

バンガード VYM 徹底分析 配当再投資戦略に最適な高配当ETF

2017年9月13日

ブラックロック HDV 徹底分析 シーゲル流投資に最適な高配当ETF

2017年9月16日

また、個人的に強く推している生活必需品、ヘルスケアセクターに関しては「株式投資の未来」を出版した後のデータにおいても優秀なリターンを収めている上に、2008年のリーマンショックにおける下落幅も限定的であったため、ローリスク・ハイリターンの傾向はわかりやすく継続しているといえます。

バンガード VHT 徹底分析 おすすめ度No.1のヘルスケアセクターETF

2017年9月3日

バンガード VDC 徹底分析 ローリスクハイリターンを実現する米国生活必需品ETF

2017年10月13日

ただ僕は正直、この中のどの過去の傾向への集中投資をするのもリスクが高いし、高いリターンが約束されているわけではないと考えています。(ただひとつあげるなら、ヘルスケアセクターの今後のリターンには期待をしています。)

だからこそ、ポートフォリオの半分はインデックス国際投資を維持した上で、残りの半分で低コストかつ期待値の高そうなスマート・ベータに分散投資をする、という方針をとっているわけです。

ただひとつ、ブログの読者の方に伝えたいこと

過去の傾向はとつぜん終わるよりも継続することが多いとはいえ、確実な未来の高いリターンを約束しているわけではありません。

このことはマルキールも、シーゲルも、もちろんその読者である僕にも共通した見解であり、シーゲルのどの主張にも集中投資をするのは危険性が高いのです。

未来は誰にもわからないので、何が正解かはわからないし、ほとんどの投資手法を悪であるとは決めつけることはできませんが、ひとつ確実にわかることは、集中投資はパフォーマンス(リスクとリターンの比率)が悪いということです。

はっきりいいますが、99%の人にとって個別株を買う必要はまったくありません。

確かに個別株を運用するのは楽しいですし、企業への愛着もわいてくるのでそういう意味では否定はしませんが、ETFと同じ水準の低いリスクを個別株で実現するにはETFの運用コストよりも遥かに高い購入手数料がかかりますし、管理も大変です。

アクティブファンドを否定している人が個別株をあれこれ選別している姿をみるのはこれまた不思議なのですが、僕は個別株の情報というのは基本的に不要だと思っているのでブログでも紹介してません。

ただETFの買い持ちだけだと退屈であるという問題はあるので、ポートフォリオのごく一部を個別株枠として割いて、市場平均と競争して遊ぶとかは僕もしてますけど、あくまでパフォーマンスに影響しない範囲です。

逆にいうと、ETFを購入対象にすることと、頻繁な売買をしないこと、これだけを守っておけばどんなポートフォリオでも大失敗はしないのですが、個別株で一発あてて目立ちたいブロガーの悪影響を受ける読者の方々が増えないことを祈るばかりです。

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