すばり、配当の高い株は得なのか?




高配当株というのは、株投資の中でも人気のカテゴリーで、ETFなどでもVYM、HDVなどの高配当株に投資したような商品をみることができます。

しかし、本当に高配当の株を買うことは投資家にとって得なのでしょうか?

この問いに答えるためには、まず株と配当の仕組みをよく理解し、その上でシーゲル教授の理論を参照する必要があります。

株にはなぜ価格がつくのか?

まず、株にはなぜ価値がついてるかというと、将来の配当が期待されているからです。

株の理論的な価値というのは、その株を保有することで将来に配当される配当金の合計を現在価値で割り引いたものになります。

現在価値というのは、例えば今100万円あったら10年後には運用で200万円に増やせるとするなら10年後の200万円の価値は今の100万円の価値と同等である、というような考え方です。

イマココにあるお金は、未来にもらえるお金よりも価値が高いわけです。

ではなぜ無配の企業にも株価がついているのか?というのは当然の疑問として出てくると思います。

率直に言って、これもやはりその企業が大きくなったときに配当を出してくれるのを投資家が期待しているからです。

今まさに成長している株をよくグロース株と表現しますが、このような会社であれば、投資家に本来配当を出すべきお金を自社の再投資にあてて、より大きな利益をだすことで将来のより大きな配当に繋げる、ということが正当化されるわけです。

また、この方法にはもう一つ大きな税制上のメリットがあります。

配当は配当金が出た時点で税金の対象となりますが、株の差益による利益であれば最後に確定するまでは税金の対象とならないため、税金を払う時期を後ろに伸ばすことができます。

こうすることで、税金を前借りした分も投資に回し、複利効果を最大限に得ることができるわけです。

投資家の方に誤解されることの多い話ですが、単に配当がもらえればその分期待値が増えるから得できる、よって高配当株を買うのが得であるという考えは間違いです。

配当が出ればその分だけ企業の資産価値は減り、同時に株価も下落するので、先に払うことになる税金分だけ損、というのが配当の理論的な位置づけです。

こうしたことはもちろん前提知識として広く知られていて、アメリカの優良企業は配当を出すのではなく、積極的に自社株を買うことによって自社の株価を引き上げ、株主に還元しようとすることが多くなっています。

高配当株が実際には有利なのはなぜか?

しかし、ここからがいわゆるシーゲル流の本領発揮です。

シーゲル教授の過去のデータによると、実は上記のデメリットが高配当株にはあるにも関わらず、高配当株のもたらしたリターンは平均的な株のリターンよりも高かったのです。

僕はこれを読んだときに、ミクロ経済学の収穫逓減の法則を思い出しました。

経済学では、何かを生産するときの1単位あたりの費用というのは最初は下がり続けますが、どこかのタイミングで上がりはじめることが知られています。僕は当時、モノは生産すればするほど1単位あたりの固定費が安くなるので、永遠に下がるのでは?と直感的に考えていましたが、よく考えればそんなことはないわけです。

例えば、1000人の中からもっとも良い生産者を選べと言われれば1人の精鋭を発掘することは容易に思えますが、事業を拡大して選ぶ生産者を増やしていけば後半になるにつれて質は低下していき、1単位あたりにかけなければならない人件費が高くなります。

日本各地にお店を出すようなビジネスであれば、最初は良い立地の場所に出していくことができますが、だんだんと自分の事業に向いた立地というのは少なくなっていきます。

このように、事業にはどこかに最適な規模というのが存在していて、無限に投資額を増やし、事業を拡大していけば同じペースで儲かり続けるということではないわけです。

企業が高配当を出すということは、その企業がこの最適点まですでに到達している可能性が高いと考えることができます。まだ収穫量を増やせる位置にいるならば、配当を出さずに自社に再投資するのが合理的な選択になるはずだからです。

また、シーゲル教授は配当というのは誤魔化しようのない利益であるという点も強調しています。

表面上(帳簿上)は財政的に健全な会社でも、潜在的な含み損が隠れていて、今の株価は単に過剰評価されているのかもしれません。

その点、配当というのはその時点で株主に還元された利益となるので安心です。

シーゲル教授は”Show me the money”と銘打ってこの記述をしていました。本当に利益が出ているのか見せてみたまえ、ということですね。笑

また、低配当の企業は、そもそも株主への貢献をあまり考えておらず、経営陣が過剰に報酬を得てしまっていて効率的に再投資されていない可能性などもあるわけです。

まとめ:高配当株は買いである

このような理由から、高配当株は平均的に買いである、というのが少なくともシーゲル教授の本から読み解ける内容になります。ただし、得た配当はきちんと再投資に回すのも他の株よりも高い成果をあげるための条件となります。

このサイトの推奨ポートフォリオにおいても、10%程度でVYMの保有を推奨しています。

シーゲル流、日本人向けポートフォリオ

2017年2月20日

続・高配当株懐疑論

2017年11月24日

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30代元システムエンジニア。 日本では経営学、アメリカで経済学や統計学などのビジネスを専攻。 趣味は株式投資からゲーム、音楽まで幅広く。 リンクフリーです、ご自由にどうぞ。