日本を救うベーシックインカムとは?




希望の党がベーシックインカム(通称BI)を公約化した影響で、BIを取り巻く議論が活発になっています。

ベーシックインカムというのは国民全員に無償で現金を給付する制度であり、「タダでお金を国民に配る」というイメージから大きな政府、社会主義、バラマキ政策、ポピュリズムというようなことを連想する人が多いようですが、福祉政策の大幅な切り捨てと一本化を前提にしており、本質的にはこれとは真逆の制度でむしろ経済右派にとって魅力的な制度といえます。

「AIに仕事は任せて人類は働かなくても暮らしていける」というような近未来のSFのようなベーシックインカム論もありますが、今の日本に求められているのは年金をはじめとした抜本的な福祉制度改革であり、行政の効率化という意味においてベーシックインカムは理想的な再配分政策なのです。

ベーシックインカムが右派、左派のどちらからも支持される理由

普段、僕たちの社会では税金をどのように使うか(あるいは税金を減らすか)で右派と左派は喧嘩をしています。

左派は税金をあげて貧者に再配分せよと主張し、右派は税金を減らして経済発展させろと主張します。

右派も左派も、「経済発展こそが貧者をも豊かにする」「最低賃金で貧者を救ってこそ経済発展する」というように、相手の視点にたっても自分たちの政策が有利であるかのような主張をしますが、これは本質的にはどんな社会を目指すべきか(=どんな価値観を選択すべきか)の議論であり、貧乏人を切り捨てて経済発展をすべきかどうかという問い自体に明確な答えがあるわけではありません。

しかし、ベーシックインカムには誰もが支持できるような魅力がいくつもあります。

行政コストの削減

まず一番大きな点として、今までは生活保護や各種控除、年金制度など誰にいくら支給するかを細かく計算していた制度を取りやめ、全国民に一定額を一括支給することによって、公務員を減らして行政コストを大幅に減らすことができるという点です。

行政コストが減る分には右派にとっても左派にとっても、自分たちが好きな政策(あるいは減税)に割り振れる原資が増えることになるため、誰にとっても喜ぶべきことです。

ベーシックインカムというのはミルトン・フリードマンによって提唱された、負の所得税というアイデアが元になっているのですが、特に政府の裁量を嫌い、自由な市場を重んじる立場の経済学者からも人気のある政策です。

これ本当に名著なのでぜひ読んでください。経済学の領域を超えて、アメリカという国の本質的な思想がわかる本です。

現行の生活保護の問題点の解消

日本の生活保護において最大の問題点は、あまりにも低い捕捉率です。

捕捉率とは、所得が生活保護支給基準以下となっているひとのうち、実際に生活保護制度を利用している人の割合であり、ドイツでは64.6%、イギリスでは47~90%、フランスでは91.6%なのに対し、日本は15.3~18%となっています。

一時期は不正受給問題によって叩かれていた芸人もいましたが、そもそも日本の生活保護の不正受給率は0.5%以下であり、世界最低水準です。

過剰な生活保護へのバッシングが本当に生活保護を必要としている人の制度の利用までをそのスティグマ性(不名誉な烙印)によって妨げ、機能不全に陥っているのです。

また、現状の生活保護はゼロかイチかの制度となっており、ギリギリ受給されなかった人がもっとも不利な制度となっているためここでも対立が生まれてしまいます。

現行の生活保護では生活保護を受けている人が働くインセンティブがありませんが、ベーシックインカムにおいては一定額を支給した他は自分で稼ぐことが求められるため、誰にでも等しく働くためのインセンティブが生まれます。

生活保護を受けている人は周りから白い目で見られ、生活保護を受けることができなかった人が受給者を叩き続けるような誰も幸せにならない社会よりも、誰もが堂々と給付を受けることのできる社会のほうが良いと思いませんか?

生活様式の変化に伴う不公平の解消

これまでの税控除のシステムは世帯を中心とした考え方が中心となっていましたが、離婚率の増加に伴うシングルマザーの増加や、共働きの世帯の増加など、現行のシステムによって得する人と損する人に差がつきすぎるのも問題になっています。

他にも例えば、主婦がアルバイトをするときは夫の扶養に入るために一定額以上は稼ぐのが不利益になるような壁が存在しており、これでは本来は働きたい人の労働力が無駄になってしまいます。

ベーシックインカムではこのような控除システムなどもまとめて解消し、個人に対する給付という形で一本化されるため、公平性が増してあらゆる人が働くインセンティブも確保されることになります。

破綻している年金制度の抜本的改革

ほとんどのベーシックインカム案では、年金制度はまとめて取りやめとなり、一定額の給付に一本化されます。

これは今の日本にとっては最大のメリットの一つであり、すでに崩壊することがわかっている制度を抜本的に改革することができるのです。

もちろんここには現在の年金制度により得をしている人が存在しているので、反対する人はでてきますが、いつか見直さなければならない制度を見直す絶好の機会です。

財源は?

ベーシックインカムへの最大の批判はコレですね。

すでにある程度語ってきたことでもありますが、ベーシックインカムは現行の福祉制度の抜本的な見直しを前提としています。

その前提の上でいえば、現実的な財源というのはいくつも案があります。

例えば、こちらの記事によれば、国民の負担増はまったくなしでも5万円から7万円程度の給付は可能であるとされています。

個人的には、所得税をあげて金持ちから税金を取るようにして、その分を幅広く再分配するような制度が望ましいと思いますけどね。

日本の経済学者である飯田泰之さんによる試算。相続税などによる税収増加を見込んでおり、現実的な案だと思います。

こちらは半分ネタですが、元2ちゃんねる管理人のひろゆき氏も次のような財源案を出しています。

ベーシックインカムの未来

僕の想定するベーシックインカムというのは、給付額を7万円前後に抑えた現実的な制度であり、徐々にAIなどによる人類の生産力の向上にともなって給付額が引き上げられ、やがてはそれが生活保障として機能される額に達するような形で実施されるのが望ましいと思います。

その前提でいうと、ベーシックインカムによって発現する未来というのは、短期的には誰もが働かなくて住むような社会などではなく、今よりももっと競争が激しくなるような右派にとって望ましい社会になるでしょう。

実際に左派が満足するような制度になるにはまだ時間がかかると思いますが、そもそも現状の一部の受給者しか救われない制度にだって左派は不満を抱えているはずです。

例えば障害を持っていて働けない人など、ベーシックインカムだけでは生きていけない人への保障をどうするかなどの議論も必要になってくるとは思いますが、シンプルに社会制度をゼロベースで見直して行政改革を実現するという点において、ベーシックインカムは極めて合理的なアイデアです。

もっとも大きな欠点はまだ実績がほとんどなく、実際にどうなるのかがわからない点ですが、徐々に欧米諸国での社会実験もはじまっています。

ただし、これだけベーシックインカムを擁護しておいてこんなことをいうのもアレですが、日本での実現見通しは限りなく低いでしょう。

いくら年金制度が破綻しているのが目に見えていたとしても、それにすがる高齢者が今の政権の票田になっているのですから、ぶっちゃけ絶望的です。

でも実現性が低いということと制度的に悪いというのは別の話で、僕たちの世代が応援すべき制度であることは事実といえるでしょう。

希望の党がどこまで本気で言ってるのかは怪しいし、勢いあまって花粉症ゼロ!と言い出したときには思わずコーヒーを吹き出しそうになりましたが、ベーシックインカムの議論が行われるようになったこと自体は良いことだし、興味を持つ人が増えてくれれば良いなあと思ってます。

 

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