あなたの人生を変えるたったひとつの方法<前編>




人間は、遺伝と環境の関数です。

いいかえると、人間の行動のほとんど全ては遺伝と環境によって決まります。

僕たちは、自分の自由な意思によって自分の行動を制御しているかのように考えていますが、最新の脳科学的な見地が物語るのはそれが幻想であるということ。

僕たちは意識を通じて、自分の身体が環境に対して起こす物理反応を観察しているに過ぎません。

自分の人生を自分で決めることは可能か?

アメリカの生理学者ベンジャミン・リベットは、僕たちが例えば腕を動かす、などの「意識的な意思決定」をする前に、「準備電位」と呼ばれる無意識的な電気信号が立ち上がることを実験で証明しました。

つまり僕たちが、何か行動をしようと意識した瞬間には、すでに体は反応をはじめているのです。

僕たちの意志は、意思決定に介在していない。

一日の終わりにテレビをつけたときに、ニュースの経済アナリストが今日の株価が上下した理由を後付けの理屈で「説明」してみせるように、僕たちの意識もまた、僕たちに起こった物理反応を「説明」しているに過ぎません。

これは厄介な話です。

何しろ世界の現象に僕たちの意志が影響を与えていないのであれば、世界は物理法則のみに支配されており、未来に起こる出来事はすべて決定しているはずです。

すでに僕たちの体に生じた反応を拒否するだけの自由は僕たちに存在している、と考える説もあります。また量子力学などに詳しい人は、不確定性原理などを取り上げて決定論を否定する人もいますが、その場合はやはり僕たちの意志が認められるわけではなく、ランダム性が原理となってしまいます。

リンゴを宙に投げれば次の瞬間には落下をはじめるように、僕たちは空腹という身体反応に対応してパン屋に出かけていることになります。

これでは、僕たちが自分の人生を自分で決めることなんて、まるでできないことになります。

大学一年生の夏の出来事

なんとなく大学に入り、なんとなく日々を過ごしていた僕の家に、とある勉強教材の営業が訪ねてきました。

彼は自慢の教材がいかに僕の人生のためになるか語った後に、

「僕はあなたの人生をかえるためにきました。このままでは、あなたの人生は30日後にも何も変わってないはず。また30日後に連絡します。」

と言い残して帰っていきました。

30日後、僕は再びその人と話をすることになったのですが、たしかに僕の生活は30日前とあまり変わっていませんでした。

この人はなぜ初対面の僕のことがわかったのでしょうか?

後から考えてわかったのは、彼は僕のことなんて何もわかってなかったのです。

彼は経験的に、人間が30日で自ら変わるなんてことはおよそ不可能だということを知っていただけで、誰にでも同じ営業トークをしていただけでした。

さすがに怪しい教材を買うことはしませんでしたが、彼の営業トークに妙に感心したのを覚えてます。

橘玲「言ってはいけない」を読む

橘玲さんの新書、「言ってはいけない」が人気ですが、ここでも僕たちの「行動」がいかに物理的な現象であるかを読むことができます。

神経犯罪学者のエイドリアン・レインは心拍数の低さと反社会的、攻撃的な行動に因果関係があることを発見しました。

心拍数の低い人間は、恐れを感じにくく、共感力が低く、また覚醒度の低さが不快な生理的状況をもたらし、刺激を求めて反社会的な行動に走りやすいといいます。

なんだかうさんくさい話に聞こえるかもしれませんが、「心拍数で将来の犯罪を予測できる」という仮説は、大規模な実証実験によってすでに証明されているのです。

また、この本では人間のこころの何割が遺伝で決まり、何割が環境によって決まるかといったデータも紹介されています。

例えば音楽の才能の92%、数学の才能の87%、スポーツの才能の85%は遺伝で決まり、残りは環境(家庭環境ではなく、同年代の友人とのコミュニケーションの比率が高い)で決まります。

他にも自閉症の遺伝率は男が82%の女が87%、喫煙の遺伝率は男が58%の女が54%というように、僕たちは自分たちで自分の人生を決めているというよりも、遺伝や環境に支配されながら、自分の人生を観察しているに過ぎません。

僕らの投票先はとっくに決まっている

社会心理学者のジョナサン・ハイトは、政治における人間の道徳的な基盤となる価値を6つに分類しています。

リベラルな人間が特に大事にするのが、

<ケア/危害><公正/欺瞞><自由/抑圧>

保守の人間が特に大事にするのが、

<忠誠/背心><権威/転覆><神聖/堕落>

これらの正義心です。

ジョナサン・ハイトによれば、これらの正義心は、生まれてくる時点ですでに予備配線(プリ・ワイヤード)されているといいます。

これらはまだ草稿段階であるため経験によってある程度変化しますが、生まれてきた段階で僕たちはどのような感情を持ち、行動するようになるかがある程度決まっているということです。

遺伝だけで、人間のこれらの性向のおよそ1/3~1/2は説明されており、5歳になる頃には大人になったときの投票行動は大体決定しているという研究結果もあるほどです。

また、ジョナサン・ハイトは、僕たちの感情と理性を、象(感情)と象使い(理性)の関係に例えています。

僕たちは理性的に判断をしているつもりでも、実際に進む方向を決めているのは象(感情)であり、その力はあまりに強く、象使い(理性)がそこに与えることのできる影響力はとても限定的であるということです。

ここでも、感情が先行し、理性的な意思決定というのはたいして効力がないことが語られています。

ちなみに長くなりすぎてしまったので詳細は省きますが、最近読んだ本では國分功一郎さんの「中動態の世界」も自由意志は存在するのかがひとつのテーマとなっており、面白いのでおすすめです。

ではどうしたら自由になれるのか?

あらゆる根拠が僕たちの自由を否定し、唯物的な世界観を後押ししているように思えます。

後編ではそんな中、自分の人生をどのように変えることができるかについて書いてみたいと思います。

なんだか金融の話と関係なさすぎて書いている僕が戸惑っていますが、たまにはいいですよね。。。

あなたの人生を変えるたったひとつの方法<後編>

2017年10月22日

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