スムーズなモメンタム株を買え──モメンタムを考える(応用編)




勢いのある株を買え──モメンタムを考える(序論)

2018.04.14

前回のモメンタムの記事からはずいぶんと間が空いてしまいましたが、来年からは実際にモメンタムのロジックを採用した投資法を取り入れることにしたため、続きをかいていきたいと思います。

まずは前回のおさらいからです。

モメンタムとは、「勢い」のことであり、過去1年に値上がり傾向にある株はその後の1年をみても良いパフォーマンスをする傾向にある、という内容でした。

この記事においては、過去1年の値上がり率の大きさのことを、中期モメンタムと呼んでいくことにします。

過去5年を参照したものを長期モメンタム、過去1年を参照したものを中期モメンタム、過去1ヶ月を参照したものを短期モメンタムと呼び、中期モメンタムについては過去と未来の成績で正の相関を示す半面、長期モメンタムと短期モメンタムについては逆相関するとされています。

しかし、ここまではモメンタムを理解するためにまだ半分です。

ある株が将来値上がりを期待できる良いモメンタム株であるためには、「スムーズな」モメンタム株である必要があります。

スムーズなモメンタム株とそうでない株の違い

スムーズなモメンタム株とは、徐々に上昇している株のことです。

ではここで問題です。

次の黒い線(AAP)と赤い線(UAA)はそれぞれ、過去1年で同程度のリターンを実現しましたが、モメンタム的に将来により期待が持てるのはどちらでしょうか?

正解は黒い線です。

より一貫した右肩上がりに近いグラフを描いているので、直感的にもわかりやすいのではないでしょうか?

2017年12月~2018年11月までの日で、AAPは正のリターンを記録した日の割合が58%ありましたが、UAAは48%しかありませんでした(わかりやすくスムーズな株とそうでないものを厳選しています)。

つまり、UAAは最終的にAPPと同じくらい大きなリターンを記録したにも関わらず、日々の値動きとしては下がっていた日のほうが多かったことになります。

このように、正のリターンの日がどれくらいあったかをカウントすることで、その株がどれだけ一貫して、緩やかに値上がっていったのかを調べることが可能です。

株のスムーズさというのは下記の公式に従って、情報離散性(ID)という数字として求めることができます。

情報離散性(ID)=過去のリターンの符号 ✕ (負のリターンのパーセンテージ - 正のリターンのパーセンテージ)

となります。

離散性が低いほど、一貫して継続的な情報であるということですね。

情報離散性と過去の統計

ここまでは唐突に「徐々に上昇してる株のほうがいいです」と言ってきましたが、具体的に過去のデータがどうなっているのかをみてみましょう。

これは6ヶ月の保有期間でみたときの数値ですが、ロング・ショート・モメンタムポートフォリオは継続情報を持つ銘柄の5.94%から、離散情報を持つ銘柄の-2.07%まで単調に減少しています。

次の表における、高クオリティポートフォリオと低クオリティポートフォリオというのは、情報離散性に基づいてポートフォリオを2つの分けたときのものです。

高クオリティのポートフォリオは、低クオリティのものと比べてリターンが良いばかりか、ダウンサイドのリスクも低くなっていることがわかります。

モメンタムと低ベータアノマリー

しかし、なぜモメンタムのクオリティが重要になるのでしょうか?

「なんとなくグラフがきれいな右肩あがりだとあがりそうな気がする」というような話は直感的ではありますが、あまり論理的とはいえません。

ひとつ考えられる仮説として有力なのは、価格が激しく上下するような宝くじのような銘柄は割高なレベルにミスプライシングされやすいということです。

シーゲル流投資の話をしたときにも、低ベータアノマリーについては何度か取り上げたことがありますが、実はこの話とモメンタムのクオリティの話には一貫性があります。

宝くじ銘柄が注目されてオーバープライシングされる一方で、緩やかにに値上がりを続ける銘柄というのはあまり注目されません(この仮説については後日ほかの記事でより深く考えてみます)。

水の中のカエルは、一気にお湯の温度を上昇させると慌てて飛び出るが、徐々にお湯を温めていくとそれに気づかずに茹で上がってしまうという話をご存知でしょうか?

モメンタムのクオリティの話はこの逸話と共通する部分がありますよね(だからカエルモメンタムなんて呼ばれたりもします)。

正しいモメンタムの指標は何か?

さて、モメンタムは過去一年の値上がり率とクオリティ、どちらも大切だということがわかりました。

ではこの2つの変数をどのように評価していけばよいのでしょう?

2018年12月3日現在、中期モメンタムのTop10は、

FOSL、TRIP、UAA、AAP、ABMD、HCA、DISCA、ESRX、CMG、FOXA

の10銘柄でした。一方でクオリティのTop10は、

MA、FFIV、AMZN、LLY、V、AAP、MKC、HFC、STX、CRM

の10銘柄となります。

さきほどグラフでも良いモメンタムの例として紹介したAAPなんかは両方に入っているので良さそうですが、他の銘柄については意外とバラけており、どれを評価すればいいのか難しいところです。

そこで僕は、過去1年の値上がり率(正規分布に近づけるために対数を取っています)と、モメンタムのクオリティについて、S&P500銘柄について相対的なそれぞれの偏差値を算出することで、両方の値を足し合わせて総合的なモメンタム偏差値を計算できるようにしてみました。

過去1年のモメンタム偏差値 Top10は?

実際に、この評価スケールに従うとどの株が評価されているのか、12月3日時点のランキングを確認してみましょう。

Ticker 中期モメンタム クオリティ 総合
FOSL 94 60 77
AAP 75 69 72
AMZN 66 72 69
LLY 65 72 69
MA 63 73 68
MKC 67 69 68
UAL 69 66 67
FFIV 61 73 67
HFC 65 69 67
AES 67 65 66

それぞれの数値はわかりやすいように偏差値のスケールに直してあるので、平均は50です。

AMZNやMAなど、確かにあがっていた日が多かった気がするなというものもちゃんとランクインしていますね。

FOSLは中期モメンタムのスコアがずば抜けているものの、クオリティは低めでモメンタム株としては議論が分かれるところかもしれません。

今日はここまでにしますが、これらの株はまだ僕が買おうと予定している株ではありません。

ここからは、バリュー投資との組み合わせ方を具体的に議論していきたいと思います。

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