時間分散を再定義する




先日、「時間分散」に騙されるな!という記事を書きました。

本日の記事はそちらの後編と位置づけていますので、読んでない方はまずはそちらをご覧ください。

「時間分散すると安全」に騙されるな!

2017年9月27日

今回の記事は時間分散を再定義すると題されており、間違った意味で濫用され続けた「時間分散」という言葉の再生を目的としています。

勘のいい方はすでに前回の記事で理解されているかもしれませんが、本当の意味での時間分散というのがどのようなことであるのか、考えていきたいと思います。

時間分散の本当の意味とは?

ある一定の資金を、複数のアセットクラス、国、銘柄などに分散させて保有することを分散投資といいますね。

例えば、資産100をすべてアメリカにつぎ込むのではなく、日本50、アメリカ50というように分散させることによりリスクを減らすわけです。

投資先の分散がされてない例

期間 アメリカ 日本
運用額 100 0

投資先の分散がされている例

期間 アメリカ 日本
運用額 50 50

では、時間に対する分散というのは実際には何を意味するでしょうか?

分散投資のときと同じようにして考えると、ある投資商品を、複数の時間に分散して保有することが、時間分散投資であるはずです。

例えば、2017年だけ資産100を保有するのではなく、2017年は50、2018年は50、という具合です。

時間分散がされてない例

期間 2017 2018
運用額 100 0

時間分散がされている例

期間 2017 2018
運用額 50 50

なぜこのような手法が合理的かというと、株式投資においては景気の波というものがあり、極端な好況や不況というのはひとつの時期に集中しやすいからです。

時間分散がされてない例では2017年が好況に見舞われればいいですが、株価の暴落に襲われたときに痛い目にあうことになります。

これらのことを考えると、自ずと正しい意味における時間分散というのがどのような投資法であるのかがみえてきます。

実は、時間分散投資というのは単に、一定の割合を常に保有し続ける長期投資を意味するのです。

全ての期間における運用額を一定にせず、あえて最初のほうだけ運用額を少なくする手法(例えばドルコスト平均法)というのは、実は本来の意味における時間分散投資とは真逆の思想なのです。

なぜ時間分散についての勘違いが横行するのか?

ではなぜ、時間分散についての勘違いがここまで大きなものとなったのでしょうか?

おそらくその理由は、ドルコスト平均法における「平均買付け価格の低下」という説明が人を錯覚させやすいというのが一因となっているでしょう。

ドルコスト平均法の説明で用いられる、下がった時にたくさん買い、上がった時には少しだけ買うことで平均買付け価格を低下させることができるものがあります。

でも、平均買付け価格を低下させるのが目的であれば、下がった時にだけ株を大量に購入すれば良いのです。

このような手法はナンピン買いとも呼ばれており、一種のマーチンゲール法と呼ばれるギャンブルのテクニックに似ているところがあります。

すでに損失を抱えている手持ちの株を、安くなった株を新規に購入することで「薄めよう」とするわけですが、もちろんこんなことで損失を取り返すことはできません。

ナンピン買いが何ら有効ではないのと同様に、ドルコスト平均法の「平均買付け価格の低下」も何ら有効なテクニックではありません。

それが吉と出るか凶と出るかはその後のグラフの形に委ねられるのであり、その時点における期待値やそれに対するリスクを改善する何かではないのです。

実際にこういった逆張りが有利かどうかは収益率の時系列自己相関次第となりますが、短期における過去のリターンと将来のリターンにはほとんど相関がありません。

いくら買付け価格をバラけさせたところで、同じ金融商品にたいして投資をしている限り、先に買った株と後から買った株の相関係数は1ですのでリスクの分散としては無意味です。

踏み絵としてのドルコスト平均法

この通り、ドルコスト平均法というのはどう考えても特別に優れたテクニックとはいえないわけですが、信仰している人やたらと多いことに特徴があります。

普通のサラリーマンが給与積立をすると自然とドルコスト平均法になること、また投資初心者が投資に対する心のハードルを下げるためにドルコスト平均法を採用することに対して理解をすることはできます。

ですが、FPなどの資格をも保有している人たちがこのような投資法を未だに信仰しているというのは驚きです。

もしあなたがFPに何かを相談しなければならないようなときは、ドルコスト平均法に対する見解を聞いてみると、その人の信頼度を計測するのに使えるかもしれません。

麻雀がオカルトの宝石箱として未だに存在しているように、やはりギャンブル性の高い世界では人間の認知の歪みが誤った結論に導くことが多々あるようです。

麻雀にそっくりな株式投資

2017年9月19日

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3 件のコメント

  • こんにちは。いつも楽しく拝見しています。

    「これらのことを考えると、自ずと正しい意味における時間分散というのがどのような投資法であるのかがみえてきます。
    実は、時間分散投資というのは単に、一定の割合を常に保有し続ける長期投資を意味するのです。」

    とても目からウロコでした。「一定の割合を常に保有し続ける」という意味ですが、例えば私はコアとしてVTをPFの40%として保有しているのですが、資産規模に変動があっても、40%を保有出来るよう、都度アセットアロケーションするということでしょうか。

    • ご質問ありがとうございます。
      ぼくは本来的にいえば、生涯における各年の投資額の総合計値をきれいに1年ごとに割りふって、毎年まったく同じ額を投資する(買い付けではなく保有する)ことができればそれがベストだと考えてますが、人間は老後にむけて徐々に貯蓄していく生き物なので、現実的にはおっしゃるような率を固定する方法がいいのかなと思っています。
      例えば、総資産のうち6割を現金、4割を株式に投資しているようであれば、1年おきにこの比率にリバランスします。総資産が1000万円だったら株式を400万まで増やす/減らす感じですね。

      ちなみに、毎年の投資額を固定するという意味で考えれば、歳をとって投資額が増えてきたら株式の比率を下げておくというのも合理性があることになります。
      何も考えずに率へのリバランスをするだけでも十分かなとは思いますけども。

  • 管理人様

    お返事ありがとうございます。
    給与所得者だと、コメントを頂いたような形になるかと考えておりました。最初に一括投資をして、あとは適宜追加購入をするようなイメージです。

    >ちなみに、毎年の投資額を固定するという意味で考えれば、歳をとって投資額が増えてきたら株式の比率を下げておくというのも合理性があることになります。

    実はここが一番悩んでおりました。当方30代なったばかりの投資初心者ですが、株式等の保有額が膨んらだ場合、年齢とともにある程度リバランスしたほうが良いように思いますが、ドルコスト平均法だと、自分が目標とする投資額(資産保有額)がどうしても後年度になってしまうのではないかと思っていたのです。

    そもそも、感覚的なお話で恐縮ですが、資産を増やしたい若い時期に投資額が少ないと、当たり前ですがリターンも少なくなることから、はたして後年度そこまで資産が増えるのか?という疑問はありましたので、記事非常に納得がいきました。

    末尾になりますが、米国株のブログでROKOHAUSEさんが一番好きなので、今後ともブログ楽しみにしております。引き続きよろしくお願いいたします。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    30代元システムエンジニア。 日本では経営学、アメリカで経済学や統計学などのビジネスを専攻。 趣味は株式投資からゲーム、音楽まで幅広く。 リンクフリーです、ご自由にどうぞ。